
音とシャント穿刺の
痛みについての研究
研究連絡先
長崎大学病院 血液浄化療法部
長崎大学大学院医歯薬総合研究科
北村峰昭・西野友哉
+81-95-819-7358
末期腎不全に至ると通常週3回、年間約150回の血液透析が必要となります。血液透析においてはシャント血管の穿刺が必要であり、穿刺には痛みが伴います。これまでに疼痛改善のために、様々な局所麻酔薬や鎮痛薬が開発され使用されていますが、切実な痛みを感じている患者さんがいらっしゃいます。痛みの一部には、鎮痛外用薬では改善が困難と思われる不安や抑うつに関係するものもあるとされています。
ところで、ある特定の音を聞くことによって病気による疼痛・不安を改善させるといった報告がなされています。しかし、これまで透析患者さんのシャントの穿刺痛に対して、それらの音が有効かどうかはわかっていません。この研究の目的は特定の音が血液透析患者さんの感じているシャント穿刺の痛みに有効かどうかの有効性を検討することです。
今回の研究で用いる音は、これまで多くの研究で透析患者さん以外の方々に効果が実証されているモーツァルトの音楽と、ホワイトノイズの2種類です。
それぞれの病気の診断や治療は、長い期間をかけて進歩・発展してきて現在の方法になっています。また、より効果的で安全な治療を患者さんにお届けするためには、これからも医療の進歩・発展は重要なことです。このような診断や治療の方法の進歩・発展のためには多くの研究が必要ですが、その中には健康な人や患者さんを対象に実施しなければならないものがあります。これを「臨床研究」といいます。臨床研究は患者さんのご理解とご協力によって成り立つものです。
長崎大学病院では、大学病院としての使命である医療の発展に貢献するため、積極的に臨床研究に取り組んでいます。これらの研究を実施するにあたっては、患者さんの人権や安全への配慮が最も大切です。長崎大学病院では「長崎大学病院臨床研究倫理委員会」を設置し、それぞれの臨床研究について厳密な審査を行っています。この臨床研究は、倫理委員会の承認と病院長の許可を受けて実施するものです。
なお、この臨床研究は、製薬会社などが行う新薬の安全性・有効性を調べ、厚生労働省の承認を得るための臨床試験、いわゆる「治験」ではありません。
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以下の条件(基準)を満たす患者さんが研究に参加できます。
① 研究参加施設で血液透析を受けられている外来患者さん
② 同意取得時に20歳以上の男性あるいは女性
③ シャントを作成して6か月以上が経過している患者さん
④ シャント穿刺で痛みを感じている患者さん
⑤ この研究への参加について同意が得られた方
以下の条件(基準)に当てはまる患者さんは研究に参加できません。
下記の条件に当てはまる場合は研究担当者に申し出てください。
① 外来透析回数が週3回未満もしくは週4回以上の患者さん
② 永久留置カテーテルで血液透析をされている患者さん
③ 過去にこの研究の予備研究に参加した患者さん
④ 聴覚障害をもつ患者さん
⑤ アンケートの答えを電子端末で入力することが難しい患者さん
⑥ その他、研究責任者が研究対象者として不適当と判断した患者さん
この他、あなたの治療歴や現在の病状、服薬中のお薬などを担当医師が確認し、研究への参加が可能かを総合的に判断します。
まず、初めに電子端末を用いて、A群かB群かに2分の1の確率で自動的にグループ分けをされます。どちらのグループに入るかはあなたや研究担当者が選ぶ事はできません。グループごとに約1カ月の2週間のあいだ、シャント穿刺の前にモーツァルトの音楽か、ホワイトノイズ(砂嵐のような音)を聞いていただきます。聞く音の順番はA群とB群で異なります。また残りの2週間は何も音を聞かない期間があります。
シャント穿刺をして、痛みがどのようであったかを電子端末を用いて答えていただきます。痛みの程度は、端末上に現れる画面のものさしでどの程度の痛みに相当するかを患者さんご自身に入力していただきます。
また、ストレスの状態を見るために、同じく電子端末によるものさしでの回答とアンケートを行っていただきます。唾液を用いてストレスの程度を計測させていただきます。
電子端末から送られたデータや唾液の結果を集計して、音楽によってどのような違いがあるかを明らかにします。穿刺をしたスタッフはこれらの結果を見ることはありません。
無音、ホワイトノイズ、モーツアルトの3つの音をYou Tubeを用いて聞いてもらいます。
(お母さんの子宮内の音といわれています)
(リラクゼーション効果があるといわれています)
以下のことについて調べます。実際に患者さんに協力していただく内容は、①から⑤になります。
①患者さんの背景:性別、生年月日、身長、体重、Body Mass Index、透析歴、喫煙歴、腎不全の原疾患、音楽の嗜好の有無、不安の程度のアンケート(State-Trait Anxiety Inventory(STAI))
②疼痛の評価(ものさしによる評価):透析開始直後に測定します。脱血側返血側をそれぞれ穿刺し、その1連の穿刺の中で最も痛かった穿刺の痛みを記載していただきます。
穿刺者は結果を知ることができません。
③不安の評価(ものさしによる評価):透析開始直後に測定します。穿刺者は結果を知ることができません。
④不安の評価(アンケートによる評価):音楽やホワイトノイズを聞く前の透析の際に、透析開始後にアンドロイド端末を用いて記入をしていただきます。なお開始前のアンケート(STAI)は(Y-2)、音楽を聞く研究が開始となってから各週3回目の際はアンケート(STAI)(Y-1)を回答していただきます。
⑤血圧・脈拍の測定:穿刺10分前、穿刺直前、穿刺直後の3回血圧・脈拍を測定します。
⑥透析条件:HD、HDF、高Na透析の有無、透析時間、血流、透析液、透析液流量、ドライウエイト、透析液温
⑦既往歴:精神疾患、糖尿病、高血圧、脳血管障害の有無について
⑧服薬歴:内服薬、シャント穿刺時の疼痛緩和目的の局所麻酔薬の使用の有無、透析前6時間前の屯用鎮痛薬の使用の有無
⑨透析の際の除水量、血圧低下の有無について透析記録から調査します。
⑩その他の穿刺条件
穿刺時の体位(座位か臥位か)
試験施行時の天気
穿刺者の職種、透析室従事年数
穿刺針の太さ
穿刺部位について
個人情報を保護するため、患者さんごとに番号(識別番号)を割り当てて、検体や情報を取り扱う際にはこの番号を用い、個人が特定できる情報は使用しません。あなたとこの識別番号とを結びつけるため対応表を作成します。この対応表は院内で保管し、院外へ持ち出す事はありません。
また、この研究が正しく行われているかどうかを調べるため、研究の関係者(外部の関係者も含む)があなたの医療記録を直接見ることがありますが、守秘義務、個人情報保護法に基づき実施するため、あなたのプライバシーにかかわる情報(住所・氏名・電話番号など)が外部に漏れる心配はありません。また、報告書などでその情報があなたであると特定されることはありません。
この研究の結果が学会や医学雑誌に発表される場合でも、あなたの個人情報が公表されることはありません。